
重要文化財
紫紙金字華厳経 巻第六十四
ししきんじけごんきょう
紙本金字/一巻 奈良時代・8世紀
縦26.5cm 全長884.8cm(写真は巻頭部分) 五島美術館蔵
深い紫色に染めた料紙に銀泥で界線を引き、金泥で八十巻本『華厳経』(『大方広仏華厳経』)を書写する。天平十三年(741)の聖武天皇(しょうむ 701~756)の詔によって全国の国分寺に安置すべく制作された「紫紙金字金光明最勝王経」を中心として、「紫紙金字経」の遺品は奈良時代のものが多い。本巻は8世紀の中ごろ、官立の写経所「写金字経所」において書写されたものと考えられている。「古代紫」といわれる赤みをおびた紫紙に映える端正な書体の金字は、一字一字猪牙で磨かれ、今なお光輝を放つ。奈良・東大寺伝来。断簡は茶の湯でも珍重され、「北野切」「紫切」「筑紫切」と呼ばれる。